Xを眺めていて興味を持った
Xを検索していると、以下のような発信をみました。
また、似たようなSaaSビジネスでラクスはCAGRが40%伸びるなかで黒字化している点がすごいという分析も。
じゃあ、財務数値を眺めてみよう。ということでやってみました。
財務データを見比べてみたらわかったこと
freee vs マネーフォワード
以下の点がfreeeとマネーフォワードの大きな違いです。
- freeeの営業利益率が80%程度である一方で、マネーフォワードは60%程度になっている。
売上総利益率が違うということは、売上原価に含まれる原価が違う(マネーフォワードでは減価償却費が原価に含まれていると推察)。 - freeeは研究開発費が多額である一方、マネーフォワードは殆ど計上されていない。
freeeで36~68億円の研究開発費が計上されている一方、マネーフォワードでは1~2億円程度しか計上されていないということは、研究開発費として処理する内容の定義が違う(freeeではソフトウェアの開発費用を研究開発費として処理しているものと推察)。 - freeeは無形固定資産(ソフトウェア・のれん)が計上されていない結果、減価償却費がほとんど計上されていない一方、マネーフォワードはソフトウェアやのれんが多額に計上されているため、減価償却費が計上されている。
freeeではそもそも研究開発費で処理するため、資産(ソフトウェア)が少なく、減価償却費がほとんど計上されていないが、マネーフォワードではソフトウェアの取得支出があり、一定金額の減価償却費が計上されている。 - freeeは株式報酬費用(ストックオプションの発行に伴って計上される費用)がないが、マネーフォワードは発生している。
そもそもの制度を導入するかどうかの違い。
即ち、Xで指摘されている通り、freeeでは、ソフトウェアの制作に係るコストは発生時(≒支払時)において研究開発費等の費用として処理する一方、マネーフォワードはソフトウェアが稼働するまでは制作コストを資産として計上し、稼働後、5年かけて費用化しているというのは正しい推測のように感じます。
また、ストックオプションの制度を入れているかどうか、個別性の強い事情も財務数値には影響を与えます。
従って、営業利益や営業キャッシュフローだけでは、両社の経営の良否を判断することは難しいと言えますし、フリーキャッシュフローで評価していくことが望ましいものと考えます。
マネーフォワード vs ラクス
ラクスはマネーフォワードと同じく、ソフトウェアの開発費を研究開発費等、発生時の費用として処理している感じではなさそうであり、コストの構成は概ね、マネーフォワードと同じようです。しかしながら、売上総利益率・営業利益率の観点から見ていずれもラクスのほうが2年とも実績としては上回っています。
売上総利益に関して、ラクスがマネーフォワードやfreeeよりも単価が高いようです。
以下の点から、単価面でラクスに軍配が上がっているのではないかと推察されます。
- ラクスの展開している楽々シリーズは初期費用+人数や件数に応じた従量料金といった、料金設定がメインのSaaSである一方、マネーフォワードは一部、従量料金があるものの、固定料金のビジネスが多くなっている
- ラクスの顧客は基本的に法人であるが、マネーフォワードは個人の家計簿アプリや個人事業主向け確定申告等のサービスも展開している
とはいえ、マネーフォワードやfreeeもまだまだ値上げをしていく姿勢であるため単価は改善の余地があるのだろうと感じます。(ユーザ側としてはつらいですが)
ラクス サービス別単価
ラクス 2024/3期 決算説明資料より
マネーフォワード ARPA(Annual Recurring Revenue per Account)マネーフォワード 2023/11期 有価証券報告書より
freee ARPU(Annual Recurring Revenue per Unit)freee 2023/6期 有価証券報告書より
また、販管費についても、以下の点から、マネーフォワードよりもラクスのほうがコスト低減しているように見受けられます。
- 人件費が低く抑えられている(1人あたりの年棒ベースで20万円ほどラクスのほうが低い)。
- 邪推でしかなないですが、毎年の法律や会計基準の改正等に対応していく必要性の高いソフトウェアを作っているマネーフォワードと比べて、経費精算・販売管理といった、比較的、「カタ」が決まっている(と思われる)ソフトウェアを提供しているラクスでは、ラクスのほうが開発工数が少なくなっているのではないかと思いました。